広域変成岩のできる深さ・場所・種類 [戻る] 

広域変成岩のできる深さ          
 1気圧(atm)は面積1cm2に1kgの重さがかかっている圧力である。
 下図の左のように,高さ10m,断面積1cm2の縦長の容器に入る水(密度:1g/cm3)の重さは1kgなので,その容器の底 (面積1cm2)には1kgの重さがかかっていることになる(1気圧)。したがって水深10mにつき,圧力は1気圧増大する。
 一方,下図の右のように,水のかわりに岩石を考えると,岩石の密度は水の密度の約3倍である(花こう岩・流紋岩は約2.7倍,玄武岩・はんれい岩は約 3.0 倍,かんらん岩は3.5 倍)。したがって,地下10mにつき,圧力は約3気圧増大する。そして,地下1000m(1km)の深さでは約300気圧,地下1万m(10km)の深さでは約3000気圧,10万m(100km)の深さでは約3万気圧の圧力がかかっていることになる。

※最近ではもっぱら国際単位系(SI単位)が用いられ,それによると圧力ではPa(パスカル)という単位が用いられる。
1気圧(atm)=1.013×105Pa (=1013hPa(ヘクトパスカル))。
水 の場合

気圧の説明
岩 石の場合

地下の圧力の説明

変成岩は,含まれる鉱物の種類を調べたり,その鉱物を特殊な電子顕微鏡で化学分析すると,できたときの温度や圧力がわかる(鉱物の種類やその化学成分は温度・圧力に左右される)。これによると,各種の広域変成岩はおよそ以下のような温度圧力条件で生成したことがわかっている。


黒色片岩,緑色片岩, 紅れん石片岩, 白雲母片岩/300〜500℃・3000〜8000 気圧(地下10〜25km)
角せん石片岩/500〜700℃・5000〜1万気圧(地下15〜30km)
エクロジャイト/600〜800℃・1万〜数万気圧(地下約30kmより深く,約100kmの深さでできるものもある)
青色片岩/約300〜500℃・約8000〜1万5000気圧(地下25〜50km)
片麻岩/500〜700℃・4000〜7000気圧(地下13〜24km)
グラニュライト/800〜1000℃・5000〜1万3000気圧(地下17〜40km)


主な広域変成岩ができるときの温度(横軸)-圧力:深さ(縦軸)条件
(※なお,一般に接触変成岩は広域変成岩より低圧条件(浅所)でできる。また,岩石の種類・水分量・圧力にもよるが,約1000℃以上では岩石は溶け始め,マグマになっていく)




 おおざっぱに見ると地下深部でできた変成岩ほど高温でできている。すなわち,全体的には地球は地下深部ほど温度が高いといえる。
 しかし青色片岩は地球表面の冷たいプレートが地下深部に沈み込み,低温・高圧条件でできる。一方,片麻岩は地下深部の熱が浅所に上昇して高温・低圧条件でできたものである。また,グラニュライトはエクロジャイトより浅い部分でできるが高温でできる。

 このように変成岩を詳しく調べていくと,地球は単純に地下深部ほど高温とはいえず,地下深部でさまざまな物質が固体の状態で絶えず複雑にゆっくりと動いているため,地温勾配が不規則な部分も多いことがわかってくる。


広域変成岩のできる場所と種類
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太平洋沖から日本周辺のプレートの境界の断面図と 広域変成岩の形成場

 地球の表面は,厚さ数10〜100km程度の10数枚のプレートという巨大な岩盤におおわれている。プレートは1年間に平均して数〜10cmというゆっくりした速さで動き,互いにぶつかり合い,片方(主に密度が高い海洋プレート)がもう一方(主に密度が低い大陸プレート)の下に沈み込んでいる(この際,巨大地震が起こることもある)。数100万〜数1000万年かかって地下深部に沈み込んだプレートを構成している岩石(玄武岩・はんれい岩・かんらん岩)やその上の堆積岩(チャート・泥岩・砂岩など)は熱や強い圧力の影響でゆっくりと広域変成岩に変化していく。したがって,プレート同士の境付近では地下深部に広域変成岩が広くできており,それが隆起作用・浸食作用で地表にゆっくりと露出してくる。環太平洋造山帯・ヒマラヤ山脈・アルプス山脈などはこのようなプレート境界部であり,広域変成岩が広く露出している。日本にも琉球列島の一部,九州中部,中・四国地方,紀伊半島中部,中部地方,東北地方太平洋側,北海道中部に広域変成岩が広く見られる。

変成作用による玄武岩の変化
玄武岩の広域変成作用による変化

広域変成岩の種類は,できるときの温度圧力条件のほかに,原岩(変成岩になる前の既存の岩石の種類)によっても違ってくる。
上図のようにプレートを構成している岩石には,玄武岩はんれい岩かんらん岩などがあり,プレートの上に存在している岩石にはチャート泥岩砂岩などがある。これらがプレートの動きで地下深部に押し込められると,下表のような,さまざまな種類の広域変成岩ができる。

広域変成岩の種類
原岩(変成岩になる前の元の岩石)
できるときの温度-圧力(深さ)条件
黒色片岩 泥岩 約300〜約500℃・約3000〜約8000気圧(地下約 10〜25km)
緑色片岩 玄武岩,はんれい岩 約300〜約500℃・約3000〜約8000気圧(地下約 10〜25km)
紅れん石片岩 チャート 約300〜約500℃・約3000〜約8000気圧(地下約 10〜25km)
白雲母片岩 泥岩,砂岩 約300〜約500℃・約3000〜約8000気圧(地下約 10〜25km)
青色片岩 玄武岩,はんれい岩など 約300〜約500℃・約8000〜約1万5000気圧 (地下約 25〜50km)
角せん石片岩 玄武岩,はんれい岩 約500〜約700℃・約5000〜約1万気圧(地下約 15〜30km)
エクロジャイト 玄武岩,はんれい岩,泥岩など 約600〜約800℃・約1万〜数万気圧(地下約30km より深 く,約100kmの深さでできるものもある)
片麻岩 泥岩,砂岩,花こう岩など 約500〜約700℃・約4000〜7000気圧(地下約 13〜24km)
グラニュライト 玄武岩,はんれい岩,泥岩など 約800〜約1000℃・約5000〜約1万3000気圧(地下約 17〜40km)
日本列島は,大陸プレート(ユーラシアプレート,北米プレート)に海洋プレート(フィリピン海プレート,太平洋プレート)がぶつかって沈み込んでいる境界部に位置し,海洋プレートを構成していた岩石やその上に存在していた岩石がはぎ取られたり,それが変成作用を受けて広域変成岩になったものが,不規則に入り乱れて広く分布している。これを付加体という。日本列島の基盤は付加体である